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詳 細

立体作品修復部門

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西洋絵画修復部門

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詳 細

東洋絵画修復部門

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詳 細

保存科学部門

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詳 細

歴史・考古部門

立体作品修復部門

Object restoration

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物語を紡いでいく。

立体作品の修復は、美術館・博物館に保管されている近現代彫刻から、郷土に受け継がれている様々な文化遺産まで、幅広く存在します。現在、立体作品修復部門では「五百羅漢修復プロジェクト」として山形県鶴岡市・善寳寺からの委託を受け、500体を超える仏像群の修復を約20年計画で実施しています。仏像などの古典彫刻には、制作された当初の記憶とともに手から手へと大切に守り受け継がれ歩んできた歴史の“物語”も内包されています。

科学の目で見る

彫刻・立体作品は経年変化や損傷が一様ではなく、修復には複合的な知識と技術が必要になります。

対象の情報を、目視による観察・赤外線などを使用した光学調査、保存科学部門と連携する機器を使用した科学的分析を通じて、構造や材料を知り、理解し、考察を重ね、修復方法を決定していきます。

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伝統を尊重しつつ、最新の知見を取り入れた修復

入念なコンディションチェックや文化財意義の考察によって導き出した方針をもとに、サンプルを用いた実験などを踏まえた慎重な検討を行ったうえで、個々の文化財に最適な修復処置を実践していきます。

当センターでは、常に物理科学的な研究姿勢のもと、伝統的な彫刻技術や漆芸技術などを駆使した方法を用いつつ、国内外の最新の研究成果を踏まえた先進的な修復処置を実践しています。

郷土で受け継がれた文化財

文化財がもつ歴史性、宗教性、芸術性といった多面的な意義について調査・研究を行うことで、文化財が失った目に見えない価値を取り戻すための考察を行います。これらの活動は、美術館や博物館などの展示収蔵施設や、他大学や研究所などの教育研究機関や地域住民、行政機関との連携し、地域で信仰されている文化財に関して、文化財を日常的に管理している方々と一緒に次世代へと伝えていくための取り組みをしています。そして、文化財をより良いかたちで未来へと伝えていくために、最善の保存と修復の方法を導き出すことを目指しています。

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西洋絵画修復部門

Western painting restoration

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より良い状態で未来に引き継ぐ

西洋絵画部門では主に油絵を取り扱っています。美術館や博物館などの公共の施設から個人の所蔵者まで幅広い層から相談を受け、作品を調査します。

損傷している作品は依頼者と綿密に話し合った上で、素材や痛み方に応じて修復処置を行います。また、現在、作品そのものには目立つような痛みがない場合でも、将来起こりうる劣化を視野に入れ、額の調整や保管・展示方法についての提案、保管環境の改善などといった、作品を取り巻く環境を整える予防的保存処置をとります。

素材を知り、作品を知る

油絵は板や布を支持体として油絵具を幾重にも重ね、ワニスで仕上げた層構造でできています。この素材の異なる層の重なりが油絵の特徴であり、損傷にも大きな影響を与えます。西洋画の修復は素材や構造を理解する所から始まります。

目視での調査は勿論、紫外線や赤外線などを利用した光学調査も行います。また、保存科学分野と連携しつつ、絵具の顔料分析などの科学分析調査などをおこない、画家はどのような素材や道具を用いて、どのような技法で作品を制作したのか、科学的な視点から作品を読み解いていきます。

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作品を守る

油絵は時とともに少しずつ痛み、絵具に亀裂や剥落が発生したり、作品表面に塗られたワニスが黄色く変色したりといった、さまざまな症状を引き起こします。痛みの原因には、保管環境や災害、作品を移動する際の取り扱いなどが関わっていますが、痛んだままにしておくと、さらに症状がひどくなってしまうこともあります。痛みの進行を食い止め、作品をよりよい状態で未来に引き継いでいくために、保存修復処置をする必要があります。

地域とともに歩む

西洋絵画修復部門でこれまで調査・保存修復処置をしてきた作品には、山形で活動した画家など、地域の中で活躍し人々に愛されてきた画家の作品も数多くありました。そのような作品をよりよい状態で未来へ受け渡しできるようにすること、作品所有者や関係者の方、他の専門分野などと連携しつつ、美術研究を進めることにより、地域の文化を支えていくことが、わたしたちの役目であると考えています。

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東洋絵画修復部門

Oriental painting restoration

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伝統の継承と進化する東洋絵画の修復

掛軸や屏風、絵馬や襖といった形態を仕立てる技術は表具や装演と言われ、この技術により日本の絵画作品は何度も修復をされながら受け継がれてきました。長い間に作品は傷みます。波打ち、横折れが進み、本紙が切れてしまった掛軸。経年の劣化から本紙が裏打ち紙から浮き上がり、しわが入ってしまった絵馬など、あまりにも傷んだ作品は一度解体して、もう一度掛けることができるよう修復して作品を受け継ぐ手助けをします。

紙を知り、糊を知り、作品を守る

日本の絵画修復の技術に裏打ちがあります。糊を塗った和紙を対象の裏面に貼り補強するこの伝統技術は、長く文化財を支えてきました。糊は小麦澱粉を煮ながら攪拌して作ります。攪拌の仕方や時間によっても糊のでき具合は変わります。大寒の頃に作る糊を長期間熟成させる「古糊」は掛軸修理には必須の材料です。この糊を使う紙は手漉きの和紙です。時に、本誌の繊維を分析して組成の近い和紙を用意し、あるいは薄くて丈夫な薄美濃紙を使い、裏打ちの技術を駆使します。古来の素材を知り、技術を錬磨しながら文化財を伝えるお手伝いをしています。

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他分野との連携による新知見の開拓

修復時には、例えば掛軸の軸棒などから以前の修復の記録が確認されたり、赤外線画像などの光学調査から技法や材料などが判明したりするなど、多くの発見があります。このような新知見に対しては、保存科学などの他分野とも連携し、新たな視点から作品の一面を捉えなおすことで、作品の特徴をより詳細に把握・評価でき、かつその保存にも貢献出来るものと考えています。

教育と普及による意識の向上

作品の修復を通して、僅かながらでも保存修復全体の意識向上に貢献することも当センターに期待される役割と考えています。

修復作品が内包してきた美術的価値を守るだけでなく、作品の調査・修復活動を伝え、作品への理解を一層深めてもらうことで、地域コミュニティの中での作品の保存につなげることができます。歴史や地域との関係性を大切にしながら、日常的な保存管理と展示活用を通じた作品の継承を目指してまいります。

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保存科学部門

Conservation science

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保存科学からの新たな発見と修復のサポート

保存科学部門は各修復研究室が必要とする構造・材質、劣化状態・要因、保存環境等に関する情報を自然科学的に調査分析し、修復部門を支援する役割を担っています。現在の保存修復では、科学的なデータで文化財の状態を診断することが重要視されています。使用されている材料や制作技法、具体的な劣化の現状とその要因を明らかにしたうえで、適切な処置を施したり環境を整えていくのです。当センターの保存科学研究室は、多様な文化財に対応した最新の機器を設置し、様々な科学分析が可能となっています。

東北という地域での課題

今年度は「元木の石鳥居」の修復に向けて、詳細な科学的調査を行う予定です。

東北、北海道では冬季に氷点下になる気温と降雪により、遺跡や石造文化財で凍結、融解の繰り返しによる劣化現象が起こります。寒冷地という過酷な条件に対応する保存材料や技術の開発は、東北にある当センターの重要な研究テーマの一つです。地域の中に残る文化遺産をより永く残していくために、気候や風土などの環境に適して、かつ住まう住民の力で容易に遺すことができる簡便・安全で入手しやすい方法や新技術の開発を目指しています。

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考古資料の保存処理

保存科学部門は出土木製品や金属製品の保存処理委託業務も実施しています。

発掘は土中にあった遺物の環境を急激に変える作業でもあります。出土木製品は長い間土中にあったため弱く脆い状態であり、発掘されると、弱くなった組織が耐えられず極度な変形を生じます。そのために化学的な処置を施す必要があります。金属鉄製品の場合は、土中で入り込んだ塩類により腐食し崩壊してしまいます。これを防ぐために脱塩や防錆、強化処置をします。こうした保存処理は貴重な考古資料を保存する上では不可欠な化学的な処置です。

循環型の活用システム

「文化遺産の保存・活用」というテーマのもと、地域に寄り添った文化財の保存・活用を基軸に、地域貢献を重要課題とし、公開を前提にした修復技術を創出してまいります。

既に地域にあり、現在まで注目されてこなかった潜在的な文化財を再発見し、地域の中での意味や関係性を考察することで、文化財そのものの価値だけでなく地域によって継承されてきた歴史を明るみに出し、より活性化を図ることを目指しています。

さらに、保存と活用を地域住民とともに実施し、その結果を地域に還元するという「循環型」の保存活動システムの構築を目指しています。

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歴史・考古部門

History and archelogy

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先人の思いを橋渡しする

先人たちの暮らしの歩みを示す遺跡は、私たちの身近なところに数多く存在しています。
遺跡はその土地が歩んできた歴史を記憶する場所です。歴史・考古部門では自治体と連携して発掘調査等を行い、地下にある遺跡の内容及び価値を明らかにします。また、保存科学部門とともに発掘された遺構の一部切り取りや土層転写、脆弱遺物の取り上げを行い、これを保存して本物の迫力を未来に伝えます。

土地の記憶をよみがえらせる

地下に埋もれた文化財は、一度発掘してしまうと過去を復元するための情報が永久に失われてしまいます。そこで遺跡は発掘せずに現状のまま末永く伝えることが最良の保存方法といえます。しかし、遺跡は発掘調査することで、その土地で起こった過去の歴史を鮮やかによみがえらせてくれます。また、これを後世に保存していくためには、分布範囲や部分的な試掘によりその内容を正確に知る必要があります。

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人の営みへの探求

考古学の研究では発掘調査で見つかった出土品を整理し、資料の分析を行います。
土器や石器、骨角器、木製品などの道具類は過去の人々の生活を復元できる重要な資料です。また、貝塚や低湿地遺跡から出土した魚介類や植物の種類を特定することは、食料や調理方法がわかるだけではなく、当時の自然環境を知る手がかりになります。さらには各時代の自然環境や社会環境の変化と人類の適応過程の解明につながるのです。

土地の記憶を未来につなぐ

地上にある文化財の研究では、長い暮らしのあゆみが作り上げてきた歴史的風致や町並み景観について調査し、その個性・魅力を地域づくりの資源として生かすことを提案しています。山形県高畠町では住民とともに江戸期以来連綿と続く、凝灰岩の手掘り採掘技術を調査・記録し、それら製品が蓄積する個性的な景観と暮らしの知恵を明らかにしました。成果の普及のために毎年石工サミットを開催しています。自らの町の来歴と特色ある景観を再発見し、これを地域資源として新たなまちづくりに活かしていきます。

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