東北芸術工科大学 文化財保存修復研究センター
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2009年1月14日
「地域文化遺産の循環型保存・活用に関する総合的な研究」
「地域文化遺産の再発見・再認識」

俯瞰視野の獲得を目指して

   主催:東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター

■ 趣旨
   二十一世紀型社会を目指すにあたって、「本来的な心の豊かさ」は最重要なテーマとなっている。  日本国内を震撼させる高松塚壁画古墳が発見されたのは一九七二年の春。その頃、日本では「国土改造論」の基に、「もの」の豊かさを目指す開発の波が全列島に及んだ。開発の波にともない発掘件数はもちろん、おびただしい遺物が出土されていく。遺跡と遺物といった文化遺産の大量生産時代に突入したのである。この時代の流のなかで「文化財保護体制」は、「ものを残す」という命題に徹している法制であった。しかし、大量生産された遺跡や遺物を、果たして「どれくらい」、「どのように」残せたのだろうか。そして、「もの」を残すことで何が得られ、真の豊かな文化の享受を手にすることが出来たのだろうか。
 高度経済成長に裏付けられた「もの」の豊かさも、資源のリミット時計が動き出した昨今においては幻となりつつある。現に、人口減少、過疎化、財源委縮、格差社会、一方向のグローバル化、環境と金融危機などの影響を受け、地域は益々厳しさを増している。「限界集落」という言葉が現実味を増しているなか、従来の「もの」を残すという概念に再検討がせめられている。「もの」を残す社会的意味を見直し、時代変化に適応した新たな「残し方」は何か。「どれくらい」残したかではなく、地域社会が「何を目指し」、「どのように」残していくのか。という明確な社会的ビジョン(=俯瞰視野)に基づいた「活かし方」が重要となっている。単に「残す」という概念から、地域を「創る」ためにどう「活かす」か。この「残す」から「活かす」への転換によって、「人」、「地域」、「文化」を豊かにする、地域を「創る」文化遺産の道が開かれるかも知れない。
 文化遺産は地域に活かされてこそ意味があり、次世代に伝えられていくもの。真の「残し方」は「活かし方」にある。高松塚古墳が発見された高度経済成長の時代から四半世紀。「活かす」地域文化遺産をめぐって、明確な社会的ビジョン(=俯瞰視野)づくりが今強く求められている。

 本シンポジウムでは、山形の日本最古の石鳥居群を含めた「街道文化遺産」を取り上げ、従来の「もの」を残すだけの観点から、地域社会が「何を目指し」、「どのように」創っていくべきか。という社会的ビジョン(=俯瞰視野)による地域文化遺産のあり方を「哲学」する。講師には、建築と景観、街道など空間論に深い上田篤(京都精華大学名誉教授)氏、中村良夫(東京工業大学名誉教授)氏をお招きし、現代社会が目指すべき「真の豊な空間」と、「社会的ビジョン(=俯瞰視野)」の重要性について語って頂く。山形の石鳥居群と街道文化遺産の保護・活用に留まらず、二十一世紀型の真の豊な地域社会を目指す上でも、大変興味深い文化論が繰り広げられることを信じてやまない。

■ 日時
  2009年01月17日(土)13:00~17:00
■ 会場
  霞城セントラル23階会議室 : 山形市城南町一丁目1-1
■ スケジュールと内容
  12:30-受付

開会-13:00   松田泰典(文化財保存修復研究センター長)

講演1-13:10 「日本の心の原風景―何故いま石鳥居なのか」
        上田 篤(精華大学名誉教授)

講演2-14:10 「風景からの町づくりと空間文化論を語る」
        中村良夫(東京工業大学名誉教授)

報告会-15:15 「日本最古の石鳥居と街道文化遺産を俯瞰する」
        張大石(東北芸術工科大学准教授)
座談会-16:00 「地域を創る文化遺産と風景を哲学する」
        上田篤×中村良夫×張大石(司会:松田泰典)

閉会-17:00

■ 演者紹介
  ○上田 篤(うえだ あつし)
1930年大阪生まれ。建築学者・建築家。建設省技官を経て、京都大学・大阪大学・京都精華大学の教授をつとめる。現在、京都精華大学名誉教授・社叢学会副理事長。主な建築作品として、「万国博お祭り広場」、「平和通り買物公園」など。著書に、『五重塔はなぜ倒れないのか』、『呪術がつくった国日本』、『日本人の心と建築の歴史』、『鎮守の森の物語』など。

○中村良夫(なかむら よしお)
1938年東京生まれ。建築・景観学者。日本道路公団を経て、東京大学助教授・東京工業大学教授・京都大学教授をつとめる。現在、東京工業大学名誉教授。主な建築設計として、「東名高速道路」、「羽田スカイアーチ」など。著書に、『風景を創る』、『風景学入門』、『湿地転生の記』、『風景からの町づくり』など多数。

 


本シンポジウムは東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターが選定を受けている平成17-21年度文部科学省私立大学研究高度化推進事業「オープン・リサーチ・センター整備事業」の一環として開催されます。
 
【申込み・問い合わせ】
 東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター
 023-627-2204
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