東北芸術工科大学 文化財保存修復研究センター

Tohoku University of Art and Design,
Institute for Conservation of Cultural property

西洋絵画修復部門

東北地域出身の画家を中心に、比較的新しい作品も含めて、日本近現代絵画の調査と保存修復活動を行なっています。

作品調査について

作品調査では、当センターの保存科学分野と連携しつつ、紫外線や赤外線などを利用した光学調査や、絵具の顔料分析などの科学分析調査などをおこない、画家はどのような素材や道具を用いて、どのような技法で作品を制作したのか、科学的な視点から作品を読み解いていきます。例えば、一度描いた絵を塗りつぶして描きなおした作品の場合、レントゲン写真を撮ると、下層に描かれた絵がくっきりと見えることがあります。また、赤外線を利用して作品を観察すると、目では確認しづらい油絵具の下層にある鉛筆や木炭の下描きの線が確認されることがあります。このような調査結果は、作品の来歴や制作時の歴史的背景を踏まえつつ考察を進めていくことで、画家の技法の特徴や、ある時代に使われた素材の特徴などが判明する場合があります。以上のような調査活動から得られた知見を、歴史研究や美術史研究、あるいは展覧会活動など、広く社会に貢献できればと考えています。

さらに、美術館などが所有する海外の画家による作品の、物質的側面からの調査は、まだ本格的には行なわれていないのが実情です。西洋絵画修復部門では、所有者と連携して東北地域にある日本近現代洋画はもちろんのこと、海外の画家による作品の調査も積極的に進めていくことを目標にしています。

保存修復活動について

油絵は時とともに少しずつ痛み、絵具に亀裂や剥落が発生したり、作品表面に塗られたワニスが黄色く変色したりといった、さまざまな症状を引き起こします。痛みの原因には、保管環境や災害、作品を移動する際の取り扱いなどが関わっていますが、痛んだままにしておくと、さらに症状がひどくなってしまうこともあります。痛みの進行を食い止め、作品をよりよい状態で未来に引き継いでいくために、保存修復処置をする必要があります。

保存修復処置に際しては、作品の状態や素材を十分に調査したうえで、所有者の方とも協議を行いながら保存計画を立てます。そして、作品がつくられた当初の姿を大切にしながら、素材や痛み方に応じて修復処置を行います。また、現在、作品そのものには目立つような痛みがない場合でも、将来起こりうる劣化を視野に入れ、額の調整や保管・展示方法についての提案、保管環境の改善などといった、作品を取り巻く環境を整える予防的保存処置をとります。

西洋絵画修復部門でこれまで調査・保存修復処置をしてきた作品には、山形で活動した画家など、地域の中で活躍し人々に愛されてきた画家の作品も数多くありました。そのような作品をよりよい状態で未来へ受け渡しできるようにすること、作品所有者や関係者の方、他の専門分野などと連携しつつ、美術研究を進めることにより、地域の文化を支えていくことが、わたしたちの役目であると考えています。


西洋絵画修復|絵具の剥離

絵具の剥離|絵具層に亀裂が入り、そこから剥離していく症状。そのままにしておくと劣化が進行する恐れがあります。

西洋絵画修復|画面洗浄

画面洗浄|表面に付着した汚れなどを、綿棒を使い丁寧に取り除きます。


西洋絵画修復|通常光線画像

通常光線画像(桜井浜江《臥像》山形美術館所蔵)

西洋絵画修復|X線透過画像

X線透過画像|描かれたモチーフとは関係のない形が観察され、下層には別の絵が描かれている可能性があります。