東北芸術工科大学 文化財保存修復研究センター

Tohoku University of Art and Design,
Institute for Conservation of Cultural property

文化財レスキュー活動

東北地方・太平洋沖地震で被災した文化財に対するレスキュー活動について

2011年3月11日に発生した大震災では多くの尊い命が失われました。御冥福をお祈りするとともに、未だ様々な形で不自由を強いられている方々に一日でも早く現状が改善されることを心よりお祈り申し上げます。

今回の災害では多くの地域文化遺産も罹災しました。文化遺産は地域の歴史を伝え次世代に継承するとともに地域住民のアイデンティティー、心のよりどころの一つとなる大切なものです。災害から復興に向かう地域のシンボル、精神的な支えの一つとしても大きな役割があるでしょう。


一点でも多くの文化遺産を救うため、現在多くの関連機関が協力・分担する形で文化遺産レスキューを実施しています。当センターは、近隣における大災害に対して全国に先駆けたレスキューの準備を整え、被災地より多くの美術作品や図書資料などを受け入れてきました。


被災資料の受け入れについて

山形文化遺産防災ネットワーク・宮城歴史資料保全ネットワーク(東北大)・歴史資料ネットワーク(神戸大)との共同作業により、4月に宮城県から被災図書資料等約1000点を搬入し、応急処置を行っています。その中には江戸時代や明治時代の貴重な書籍も多数含まれていました。その後、陸前高田市の博物館から約4000点の図書資料や自然史研究資料を搬入し、応急処置をし行っています。また、5月には文化庁からの要請により、美術作品の現地応急処置のため専門のスタッフを派遣し、その後多数の作品を受け入れています。


美術作品の救出

文化財レスキュー(藤原)山形市にある本学も停電と食料、燃料不足に遭い一時機能が停止し、そして、報道で次々に目に入って来る悲惨な状況に呆然としました。文化財の医者であると日々自負している私たちは、直ぐにでも駆けつけたい気持ちは山々でしたが、先ず何ができるか、何を準備しなければならないかを皆で相談しました。まず人命、そしてライフライン、それから運び込まれるであろう被災した文化財の受け入れという結論でした。全国美術館会議保存ワーキンググループ(CWG)で経験した神戸や高知、新潟においての天災による文化財の救出が思い出されました。それぞれの持ち場の方々が頑張り、リレーのように本学に文化財が運び込まれました。


図書資料を中心とした応急処置作業

文化財レスキュー(米村)被災図書資料に対して文化財保存修復研究センターが実施している応急処置作業の工程は、大きく分けて乾燥とクリーニングです。搬入直後に資料を仕分け、すでに乾燥が進んでいるものについては扇風機等で送風し完全に乾燥させ、多くの水分を含みカビの発生や腐敗が進行する恐れのある資料については、冷凍保存をしました。冷凍した資料は順番に真空凍結乾燥処理を実施しています。真空凍結乾燥法は、低温で気圧を下げると氷から水蒸気へと昇華する水の物性を利用する方法で、液体の状態を経ないためカビの進行や腐敗を妨げて乾燥させることが可能です。資料によって差はありますが1cm程度の厚みの和書であれば、3〜4日で終了しています。乾燥が終了した資料は、刷毛、筆、竹べら等を使用して泥を除去するドライクリーニングを施しています。一点一点行うため大変時間を要する作業です。現在このクリーニング作業は山形大学、米沢女子短期大学、東北公益文科大学といった山形県内の各大学でも協力していただいています。本活動は今年度だけにとどまらず、数年を要するものと予測されます。資料を返却できる状態になるまでに被災地が復興するには相当の時間を要するでしょう。その間、所有者とのコンタクトを取りつつ、専門を生かした復興活動として、今後も作業を進めていきます。